時折、夢を見る。

 

 

とても広い、だが何も無い場所。
そこにぽつんとたった一人。
俺じゃない。カカシが、たった一人で。
何も言わずにじっとこちらを見ているんだ。
とても静かで、音も何もなく、何か言いたそうにしているくせに
何も言わずにただ、今にも泣き出しそうな顔をして。

 

 

 

 

だからだろうか。
そんな夢を見た翌日は、俺はアイツの隣にいる。
あの夢で聞けなかった言葉を聞くためなのか、
それとも、俺自身がアイツに何かを告げるためなのか。
よくは分からなかったが、自然と身体が動いていた。
アイツはといえば、そういう日は何故か決まって、
やはり何も言わずにただ俺を隣に置いてくれるのだ。

 

 

「……なぁ、ガイ」

 

 

ある日珍しく、カカシが喋った。
上忍待機所の机に置いてあった資料に目を通しながら、
本当に何でも無いような顔をして。

 

 

「なんでお前、そんな泣きそうな顔してんの?」

 

 

俺がその問いに対して答える術など持ち合わせていないことを、
多分、コイツは知らないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はあの時何と言って返しただろうか。

それも今となってはもう、記憶からは失せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただお前が優しかった事だけは、今でもちゃんと覚えている。