完璧です…!という僕の言葉に、そうか良かったな。とネジの声。
もうすぐ、僕達の上司であるガイ先生のお誕生日です。
それを素敵に演出するため、僕とネジとテンテンはここ数日、
ずっと打ち合わせをしてきました。
粗方決まりましたし、あとは当日を待つだけです。
ガイ先生の喜ぶ顔を想像したら、僕も楽しみで仕方ありません。
ガイの誕生日、なんて別にどうでも良いと思っていた。
……だが、俺の誕生日にはちゃんと祝ってもらったから、
何も返さないわけにもいかないだろう。
だから、いいんじゃないか?俺も一口乗ってやる。
そう言えば、とても驚いたような目でリーは俺を見てきた。
どうやら予想だにしてなかったようだな、この反応は。
失礼な奴だ。
買い物に行くからとテンテンが出て行って、部屋の中には僕とネジだけが
残されました。
しかも帰り際にテンテンが、アンタ達今日はクリスマスよ?知らないの?
なんて言葉を置いていきまして。
はて、クリスマスとは何でしょう?
知ってますか、ネジ?と訊ねたら、ネジは黙って首を横に振りました。
ただ、と補足のように言葉が加わります。
遠い昔の偉い人の誕生日、だったような気がする。
どうやら、今日も誰かの誕生日だったようです。
でも、見たこともない、知らない人の誕生日なんて祝う気になれません。
そう言えば、同感だな。という返事がありました。
最近ネジとは意見が合うような気がします。
僕は。
テーブルに頬杖をつきながら、アイツはぽつりと呟いた。
僕は、ガイ先生と、ネジと、テンテンの誕生日が祝えたら、
それでいいです、と。
それだけでいいのか?と問えば、はい。と真っ直ぐな言葉。
大事なもののことだけ大切にできたら、それでいいのだ……と。
俺もお前も、そんなに器用な人間じゃないのは分かっている。
だからアレもコレもと欲を出すのはナンセンスだ。
両手に抱えられる程度のもので、精一杯だから。
それはお前にもちゃんと分かっていたという事か。
そして、その大事なものの中に、俺も入っているのか?
外では夕暮れだというのに人のざわめきで一杯です。
クリスマスという一種のお祭りのようなイベントでは、夜遅くまで
たくさんの人達が外を出歩いているようです。
だけど今、この部屋だけは、隔離されたような静けさを保っています。
その静寂が心地よいと思い始めたのは、いつ頃だったでしょうか。
凪いだ水面のような、静かだけども淋しくはないその空間を
作ってくれているのは、いつもネジでした。
いつだったか、キミが僕に告げた言葉。
あの、夏の暑い日にくれた、言葉。
まだ……僕の中で消化しきれたわけではありませんけれど。
だけど、たぶん。
きっと僕は、キミの事を。
好きです、なんて言ったら、キミは一体どんな顔をするでしょうか。
多分そこがゴールなんじゃなくて、きっとここから、始まるんだろう。