ちょっとした任務で波の国まで来た時の事。

任務自体はあっさりカタがついて、帰ろうとした時に

アイツが言ったんだ。海が見たいと。

夕焼けの広がる浜辺に立って。

水平線の向こうに沈む、赤い夕日を真っ直ぐに見つめる。

その姿は、ただ海を見物しているという風には思えなくて。

腕を捉えたら、酷く驚いた目が俺を見た。

その後にとても困ったような顔で首を傾げたので、

俺はものも言わずに腕を引っ張ってそこから歩き出した。

先を行く俺の背に、リーの声がかかる。

木ノ葉には海がありませんから。

また、来ましょうね。

なんて。

今見たものの事をどう言えば良いか分からなかったから、

ただ俺は一言、嫌だ。と返しておいた。

なんとなく、このまま奪い取られてしまいそうな、そんな気がして。