梅雨に入ると、雨の日が多くなります。
雨が降るとなかなか修行にも身が入りません。
ていうか、そもそも外に出られません。
家の中にいるのも飽きました。気分まで滅入ります。
そんな折、珍しく家の戸を叩く人がいたものですから、
驚いて戸を開けてみれば、立っていたのはネジです。
どうしたんですか、と訊ねれば、暇だったから、と
そっけなくそれだけ言って、僕が何か言う前に勝手に
部屋に上がり込んできました。
ほんとに、こういう所だけは傍若無人すぎて言葉も出ません。
土産だといって手渡された包みを開くと、お茶の葉がありました。
聞けば、宗家で出してもらっているお茶がとても美味しいから、
黙ってくすねてきた、なんて言うもんですから。
思わず声を上げて笑えば、ネジも少しだけ笑ってくれました。
あとは、その美味しいお茶を頂きながら、くだらない雑談を
ずっと続けました。
気がつけば、あの滅入るような気分の重さが、いつの間にか
どこかに消えて無くなっていました。
夕方、帰り際にネジが言いました。
明日も雨なら、また来る。って。
さあ、明日の天気はどうなるでしょう?
ほんの少し、僕に楽しみができました。
雨ならまた彼が来る。晴れたら外で、彼と会おう。