それはアカデミーに入学したての頃のことだ。
既に白眼の使い方を知っていた俺は、同級生達の力量を
まずはそれで一通り計ってみた。
強敵そうなのが数人、それ以外は全て己より下。
なんだ、意外とアカデミーも大した事がない。
もう少し期待していたのだけれど。
中でも一番目を引いたのは、忍術も幻術も素質すら
見られない落ち零れだった。
どうという事はない、単なる興味だ。
何もできない、人並み以下の体術だけで、コイツはどこまで
もがき続けるのだろうかと。
きっと早い段階で消えるのがオチだな、と高を括っていたのだが。
どうしたことか、ソイツは体術だけで卒業試験を切り抜けてしまったのだ。
これは珍しい、アカデミー始まって以来初めてのことだと、
教師も驚くしかなかったようだ。
いや、教師だけじゃない。
その時の同級生は皆、驚きを隠せずに見ていたか。
だが俺は別にどう思うこともなかったな。
これは数年前の桜が咲く頃の話だ。
その頃から俺はお前を見ていたのだと、そう言ってやれば
お前は驚くだろうか?
お前がどれだけのものと引き換えにどれだけの強さを得たか、俺は知っているんだ。