「中忍試験?」
「そ。下忍になったお前達には、もれなくそれを受けてもらうから。
皆の前で戦うんだ、充分に注意していけよ?」
きょとんと目を瞬かせて訊ねる六號に、カカシがにこりと笑って言った。
表向き、下忍として生きる彼らには必ず通らなければならない道がいくつかある。
その内のひとつ、それが中忍試験だった。
<第4の話>
中忍試験1次会場で、思わぬ顔に出会った。
いつかの夜に出会った事のある、うずまきナルトだ。
彼もまた一人の下忍として、この試験に参加する事になったのだろう。
「……面白いことになりそうです」
ネジと、それからガイ班としてチームを同じくしているテンテンとの
スリーマンセルで試験に臨むリーは、見覚えのある姿を視界に入れて
珍しい、と目を見張った。
ということは、ほかの【朱】の連中も参加しているのかもしれない。
「何してるんだリー、行くぞ」
じっと見ていたら後ろから肩を叩かれて、ハッと我に返ったリーは
慌てて後ろを振り返った。
「ネジ……すいません、ちょっと先に行ってて下さい」
「なに?お前まさか……」
「すぐに追いつきます!!」
言うなり手を振り払ってリーは駆けて行く。
その後姿を見送って、ネジは重苦しい吐息を零した。
リーの魂胆など見え見えだ、そしてあの時に知ったうずまきナルトが
この試験に出て来ることも知っていたし、リーが追いかけていった相手が
ナルトである事も、分かっていた。
確かに日常生活での個人的な接触は禁じられていないけれど、相手はかつて
リーを殺そうとした奴だというのに。
「……モノズキな奴め」
どうしたの?と問い掛けてくるテンテンに何でもないと返して、ネジは
先に教室へ向かおうと歩き出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
強い人間を目の前にすると、闘争心が湧き出してくるのは仕方の無いことだ。
まさか、ナルトと同じチームの者に、あのうちはの人間がいるとは思わなくて、
これも何かの縁だろうと、彼らに追いついたリーは思わず真っ先にサスケに
勝負を挑んでしまった。
もちろんナルトの事も気にはなっていたが、彼とは同じ試験を受けるのだ、
接触するチャンスはいくらでもある。
むしろうちはの人間と拳を交えるのは、もしかしたら今しかできないのかも
しれない。
そうかと思えば、共にいたスリーマンセルの最後の一人、サクラに心を
奪われてしまったりして、その時のリーはなかなかに忙しかった。
最終的にはサスケとの勝負の真っ最中に、上司であるガイに止められて
しまったり、更には怒られてしまったりと色々あったのだけれど、結局は
そこで時間が無くなってしまったために、リーは諦めてネジ達の待つ教室へ
向かうことにした。
(…………?)
その後ろからピタリとついてくる気配を感じて、リーは廊下を歩く足を止めた。
ゆっくりと振り返ってみると、そこに立っていたのは。
「………ナルトくん、ですか」
「よォ、」
確かにリーは彼を追いかけて行ったのだけれど、あの場ではロクに相手をして
いなかったと自分でも思っている。
だから彼が自分を追いかけてくる理由なんて無い筈なのだが。
「どうかしましたか?
もうすぐ、試験始まっちゃいますよ」
「………あのさ、お前さ、」
ととと、と軽い足取りでリーの元まで走ってきたナルトは、顔を彼の首元に
近づけて、くん、と確かめるように鼻をひくつかせた。
「な、何ですか……急に?」
驚いたリーが身を離そうとするよりも早く、ナルトの手が彼の腕を掴んでいた。
そして顔を上げ、にたり、と狐のように目を細めて笑う。
「お前………………5番目だな?」
ぞくり、とリーの背中に寒気が走った。
先程に見たテンションの高さからして、昼間を主にしているのは弐號だと思って
いたのだが、今目の前にいるのは、もしかして。
「ぜ……零………ですか?」
「やっぱり、伍號だ」
思わず口走ってから慌てて口元を押さえてももう遅い。
やっぱり、と頷いたナルトは満足そうに手を離した。
「また……僕を殺しに来たんですか?」
「こんなトコロで人なんか殺っちまったら、俺が怒られるってばよ。
お前を殺すのは、まだだ」
「そう……ですか」
ホッと肩の力を抜いて、リーは安堵の息を零した。
とはいえ自分を狙うのをやめたわけではないようだから、安心してばかりも
いられないけれど。
「……ったく、こんな子供の祭りみてぇなのに付き合うのがバカバカしいって
思ってたんだけどよ、お前が出るなら話は別だ」
「え?」
「楽しみができたからな」
「楽しみ……ですか?」
「ああ!」
恐らく今、彼の機嫌は絶好調に良いのだろう、満面の笑みを浮かべたままで
リーの言葉にこくりと頷いた。
「お前さ、絶対に最後まで上がって来いよ」
「……そのつもりではいますが……どうしてですか?」
「んなの決まってるってばよ!」
ちっちっち、と人差し指を立てて振りながら、ナルトは。
「大勢の観客が見てる目の前で、俺がお前を殺してやるからよ」
至って軽いノリで言うナルトの目には、殺意しか篭っていない。
ぐ、と拳を握り締めて、リーは思わずごくりと喉を鳴らした。
こんなあからさまな殺意を向けられたのは初めてだ。
「………まだ、諦めてなかったんですね」
「言っただろ?
次に会ったら絶対に殺してやるってよ」
「まぁ、忘れちゃいませんが……」
「だからお前、俺と戦うまで絶対負けんじゃねーぞ!!」
「そんなムチャな……」
どんな相手が待っているか分からないのに、素直にハイとは答えられない。
困っていると、ナルトは言いたいことを言って満足したのか、じゃあなと
言ってそこから消えてしまった。
廊下にぽつんと残されたのは、リー1人。
「まぁ…………やるだけやってみますか」
小さく独りごちると、リーは壁にかかっている時計を見上げて慌てたように
教室へ向かって駆けて行ったのだった。
試験開始まで、あと5分。
「おっそーい、ナルト!!」
「悪ィ悪ィ!!
思ったより便所が混んでてさぁ…」
「言い訳するなウスラトンカチ。
教室まで走るぞ!!」
試験開始までもうあまり時間が無い。
サスケの言葉にサクラも頷いて走り出し、最後にやれやれとナルトもついて
走り出した。
そんなナルトの隣にサスケが並んで、小さく耳打ちをする。
「聞いた話によると、1次試験は筆記らしいぞ」
「………はァ!?」
「ま、せいぜい落ちんなよな」
「うっそだろ、オイ……!!」
とはいえ同じ【朱】に所属している参號の言葉だ、信憑性は高い。
筆記ね、と呟いたナルトは、少しの間考えるようにして。
(…………あっちに任せるか。)
やってらんねぇ、と零號は弐號へバトンタッチする事に決めたのだった。
<続>
なんとなく自分の中で方向性が定まってきたカンジ。
ちっともダークになりきれてない事に微妙な敗北感はあるのですが、
とりあえず私は2×5より0×5が書きたいらしいよ。(笑)
だよなぁ、2だったらスレじゃなく普通に表でナルリー書いてりゃ
いいもんなぁ。なるほど納得。
しかし0の方のナルトって………多分、鬼畜攻だぞ。どうすんだ私。(爆)
色んな方から、「今までにないスレ設定で珍しい」というお言葉を
たくさん頂いております。
面白いと思って頂けているのであれば、これは褒め言葉として
有り難く頂戴いたしますけれども(^^)
そうか……あんまりない設定なのか。
そりゃそうだ、私自身未だにスレキャラがよく分かってない。(汗)
一体これからどうなることやら……。