<The composition in the future which will come sometime.>

 

 

 

 

「ちょっとナルト!
 カカシ先生、見つかった!?」
「ダメだってばよ、サクラちゃん。
 どっこにもいねぇー」
「まったく、もう……。
 綱手様、カンカンよぉ…」
「うへぇ……バァちゃん怒ったら怖ぇのにさあ、
 カカシ先生ってば懲りねーよなぁ〜…。
 なぁなぁサクラちゃん、その任務オレ行っちゃマズイの?」
「馬鹿ナルト!そういう問題じゃないでしょ。
 綱手様がカカシ先生に出そうとしてる任務なんだから!
 ああもう……いい歳してあの人は……」
ナルトの言葉に頭を掻きながら仕方無さそうにサクラがため息をつく。
思えば昔から、そういう子供っぽいところはあった。
下忍合否の試験をした時に初めて出会って、それから10年以上も経つが、
こういうトコロだけ、さっぱり変わってない。
「あと、可能性があるとすれば………ガイ先生の所ね」
「激眉先生の居場所は分かってんの?サクラちゃん」
「ううん……今、リーさんに捜してもらってる。
 ネジさんが居ればもっと話は早いんだろうけど…今はいないし」
「任務?」
「今朝出たばかりよ」
「タイミング悪ィなぁ」
修行と任務の傍らで、サクラは綱手の秘書的な役割も担うようになっていた。
今まではシズネが一手に請け負っていたものを分担しているのだ。
そうする事で、シズネも綱手の下を離れ任務に出る事ができるようになった。
まだまだ医療忍者が少ないこの忍の世界で、サクラやシズネのような人材は
とても重宝される。
実際のところ、サクラはシズネの代わりを務めるようになって、いかに彼女が
苦労していたかを思い知る事になったのだが。
「ナルトくん、サクラさん!!」
「あ、リーさん!!どうでしたか!?」
「それが………」
音も無く目の前に現れたのは、サクラがガイの捜索を頼んでいたリーだ。
里を一回りしてきたリーは、期待の篭った眼差しを向けてくる2人に
申し訳なさそうな視線を向けて首を横に振った。
「……思い当たるところは全部捜したんですが……」
「そうですか……」
「なぁサクラちゃん、やっぱそれ、俺が行ってくるってばよ!!
 絶対絶対あの人ら捜すよりその方が早いって!!」
「でも……」
「僕もナルトくんの意見に賛成です。
 これだけ捜して見つからないとなれば、仕方無いと思いますよ。
 ナルトくん一人で心配なら、僕も一緒に行きますから」
「おいちょっと待てゲジマユ!!
 俺一人じゃ心配ってどういう意味だってばよ!!」
「当たり前でしょナルト!!
 アンタはまだ中忍、リーさんはもう上忍なんだから!!」
頬を膨らませてそっぽを向くナルトに、リーが困ったような笑みを見せ、
まだ迷いを払いきれないサクラは懐から指令書を取り出して眺めた。
指令書にはS級の文字、さすがにナルト一人では心配だ。
忍の能力だけなら今や特別上忍をも凌ぐ力を持っていると思うが、残念ながら
ナルトはそれ以外の部分で欠けているものが多すぎる。
それがナルトとリーの決定的な違いで、ナルトが未だに中忍レベルに収まっている
直接的な理由だ。
「……分かりました、それじゃあリーさん、ついでにナルト。
 この任務、2人にお願いするわ」
「了解です!!」
「ちょ、サクラちゃん、ついでって何だってばよー!!」
「綱手様には私から話をしておきますから」
「分かりました。
 それじゃあナルトくん、行きましょう!!」
「ちょ……なんか色々納得いかねーってばよーーー!!!!」
まだ何やら喚いているナルトの襟首を掴むと、サクラから指令書を受け取って
リーは相変わらずの素早さでその場を去っていく。
その姿を見送りながら、サクラはやれやれと肩を竦めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………行ったか?」
「ああ、行ったようだな」
何処かは言えない、とある場所。
そこに居るのは片目を額当てで隠した男と、綺麗に切り揃えた黒髪を持つ男。
もちろんカカシとガイの2人だ。
ところが、2人とも忍の装束ではない。
この時点で2人に任務を受ける気が全く無いのが窺える。
「リーもついて行ったようだし、まぁ大丈夫だろう」
「ナルトの奴もぼちぼちこの辺でランクアップ目指さないとな、
 いつまでも中忍ってわけにもいかないだろ」
「しかし、俺達が隠れる必要性が分からん」
「何言ってんの、隠れなきゃ俺達にあの任務回ってきちゃうでしょ」
「俺達に、じゃない。お前にだ」
「…………ガイってば最近冷たいな」
「事実を言って何が悪い?」
とは言えこうやって一緒に隠れてやってるのだ、付き合いが良いと言われるなら
まだしも、冷たいなどと言われる筋合いは無い。
憮然とした表情でガイが答えれば、カカシはひょいと肩を竦めただけで
それ以上は何も言おうとはしなかった。
ナルトとリーの姿が見えなくなって、サクラも戻ったのだろう、通りから
姿を消したところで、もういいだろうと2人は身を隠していた場所から
抜け出してきた。
とても近いところで見ていたのに、気づかれる事が無かったという点について、
彼らを未熟と言うべきなのか、自分達が熟練されていると言うべきなのか。
何だか少し複雑なのだが。
「……しかし、あの子達もS級を任せられる程に強くなったのだなぁと思うと、
 こう、感慨深いものがあるな」
「出会った時は、ホントにコイツら大丈夫かなって心配になったのにな」
「成長とは………素晴らしいものだと、こういう時に感じるぞ」
「俺らもボチボチ、引退時期かねぇ」
「ん? ……カカシ、
 お前そんな事考えてるのか?」
頭を掻きながらのんびりそう呟くカカシを、ガイは少し驚いたように見た。
「そろそろ写輪眼はキツイよ、俺」
「……まぁな、正直なところ俺ももう蓮華はキツイ」
「お互いに歳食ったモンだな」
ははは、と笑い声を上げて、だがガイはカカシの言うことも尤もだと感じていた。
いくつになっても技は磨ける。経験も積める。
だが、体力だけはどうあってもこれから先は落ちていくばかりだ。
もちろんそうなれば、任務に出た先での危険は増すだろうし、ランクが上がれば
上がるほどに厳しいものになっていくだろう。
あの時出会った頃とは見違えるほどに、子供達はみんな強く、逞しくなった。
そろそろ全てを子供達に任せ、一線を退いても良いかもしれない。
もちろんそれはカカシが言わなくても、ガイは少し前からそんな風に思っていた。
自分の部下達もみんな中忍から上忍へと上がり、今では共に任務に出ること自体が
無くなってしまっていた。
「あー……でも、もう少しかかりそうかな、俺」
「どうした?」
「ナルトがまだ、ちょっと心配だからな」
「だから、その為に今から動くんだろう?」
「……そういえばそうだったな。
 いけないいけない、ついウッカリ忘れそうになってた」
「お前って奴は………」
これから自分達はナルト達を追いかける、そしてS級任務に対してどう対処するかを
見届けて、判定を下す。
つまり彼を、もうひとつ上のステップに上がらせるかどうか。
サクラが任務を出すためにカカシを捜すところから、これは始まっていた事だ。
なので任務をナルト達に出してしまった事を、綱手は叱ったりはしないだろう。
「やだなぁ、コレしんどいんだよなぁ」
「ぶつくさ言うな、だから俺が一緒に行ってやるんだろう」
「うわ、恩着せがましい言い方すんなよ、ガイ」
「だったらやめるぞ俺は、大体ついて行く必要は俺には無いからな」
「ちょ、ま、ゴメンってばついて来て下さい!!」
S級任務の内容の厳しさは自分達が一番よく分かっている。
そんな中で上忍へ上がるための審査をするカカシとガイの方が、ある意味で任務に挑む
子供達より厳しいことになる。
このランクの任務はどちらかと言えば他国同士の揉め事の間に入って戦う、いわば
戦争をしに行くに近い仕事が多い。
もちろん戦闘になる可能性は非常に高いし、敵側の忍だって相当な手練だ。
これからナルトとリーを追跡していく自分達は、彼らに見つかってはいけないし、
更に敵側の人間に素性がバレてもいけないのだ。
木ノ葉の忍装束なんて御法度、だが知られないような格好で行くとなると、万が一の時に
できることは限られてくる。
忍具は持っていけないが、忍術があるのである程度は何とかなるだろうと思いはしたが、
もう一手あった方が良いだろうと、カカシはガイを誘った。
ガイの場合は体術が本分なので、そもそもが手ぶらで構わないのだ。
「さぁて、そろそろ行くかな」
「久々にアイツらの戦いぶりが見れるんだ、楽しみじゃないか」
「………ああそうだ、ガイ」
「ん?」
「ナルトがこれで中忍を抜けたら、俺は晴れて九尾のお目付け役からもお役御免に
 なるんだけどさ、」
「……それがどうした?」
こくりと首を傾げて問うガイに、どう言えば良いものかと頬を掻いたカカシは
ふいと視線を逸らして少し言い難そうに、口を開いた。
「そしたら前線からは引退して、少し里を出てみようかなって思ってるんだ。
 今までずっと木ノ葉にしかいなかったからさ、色んなトコロを見に行ってみたいんだ」
「なに…?」
「まずは雪の国かな、また来いって言われちゃってるし」
「…………。」
「でな、そこの女王様に、次に来る時はお前も連れて来いって言われてるんだ。
 前に話したことあったろ?あの時の姫が女王になったって。
 だから、さ」

もしかしてこれは、一緒に来ないかと誘われているのだろうか。

言葉で明確にはされていないが、どう考えてもそういう風にしか受け取れずに
ガイは困惑したまま視線を向けるだけだった。
そういえば昔、紅がそんな事を言っていたような気がする。
あの時の話は本気だったのか。
だが唐突に気がついた。
2つ返事で答えるには、自身にはあまりにもそれは不透明なビジョンでしかないことに。
「…………少し、考えさせてくれ」
「うん?」
「そういえば俺は、前線を退く気はあっても、その後にどうしようかなんて
 考えてみた事がなかった。
 それを少し、考えてみたい」
今後も前線で忍として活動し続ける、という気は正直なところガイには無かった。
けれど、それならば自分はその先をどのようにして過ごしていくのか、そこまでの
構図が頭の中に無かったのだ。
少し整理して考えて、もしカカシの言うような旅路に興味が持てたのなら、
一緒に行ってみても良いかもしれない。
前線は退いても、忍を目指す子供達を育てて行く事はできるだろうし、アカデミーも
最近は人手不足だと聞く、もちろんそっちの方面に進むのだって良いだろう。
道はまだ、目の前にいくつもあるのだ。
そう思った通りのことを言えば、いいんじゃないの?ゆっくり考えなよ、と
カカシはそう答えて笑ってくれた。

 

 

今暫くの猶予はできた。

だが、いずれ自分は決断しなくてはならないのだろう。

 

何も未来は、子供達だけのものじゃないのだ。

 

 

 

 

「ま、とりあえずは最後の大仕事といきますか!」

「そうだな、ぬかるなよカカシ!」

「その台詞そっくりそのままお前に返すよ」

 

 

言い合って、顔を見合わせ笑いあって。

 

 

 

 

2人は同時に音もなく通りから姿を消した。

 

 

 

 

 

<END>

 

 

 

 

書いてませんでしたが、サクラちゃんは特別上忍になってる予定。(笑)

 

なんか色々妄想が膨らみすぎて、どこで止めようか焦りました。
若干『雪解けの水、〜』のネタ引っ張ってきてスイマセン。
いいよね一応コレ時系列で並べてあるんだから。(爆)
とりあえず、ガイ先生の結論は一旦保留で今回は何とか収まりました。
でもコレってアレだよなぁ、ナルトが任務中に大失敗やらかして、
昇格が見送りになればオチとしては最高なんだよなぁ。
そんで見守ってたカカシが頭を抱えるといいんだ。
一緒に見てたガイなんかは腹抱えて笑ってるといい。
大人は結局いつまでも見守る立場なんだよ。
それはこれからも絶対に変わらないんだと思うよ。

 

「え、ちょ、ナルトの奴、俺の人生設計台無しにしちゃった…!?」

「あっはっはっはっは!!まぁそう落ち込むなカカシ、
 まだ次の機会があるさ、なぁ?」

 

自分が辞めたいからって甘い査定をすることはありません。
その辺はカカシもガイもプロですから。
ダメな時はやっぱりダメってちゃんと言う。
そんでまた次の時も苦労しながら尾行していくんだ。頑張れ大人!

 

 

あと、青年期として18〜22歳の間というご希望を頂いていたのですが、
すいません、都合でもうちょっと年上になっちゃいました…。
イメージとしては、ナルトやサクラは25ぐらい、リーは26かな。
なのでカカシとガイは40前です。(笑)
第2部のナルトが多分15〜6ぐらいだと思うので、そうすると
18〜22だと間が無くて……あんまり成長した感が出せないかも、と
思ってしまったのでした。

 

折角なので、いずれもう少し先の話までカカシとガイで書ければいいなと
思っております。機会があれば!

 

20万ヒット企画リクエストより頂きました、
「青年期(18〜22歳)の子供達+その師匠」、任務完了。
リクエストありがとうございました!!