「どうすんだよサスケ」
「どうするって何だ」
「決まってんだろ!?
 逃げ出すどころか2人揃って捕まっちまうなんてよォ!!
 これからどうすんだってばよ!!」
「……決まってんだろ、バカ」
「何がだよ」
「逃げるに、決まってる」

 

 

 

<The long long story which begins from here.>

 

 

 

 

 

 

2人揃って牢屋に放り込まれて暫く、漸く静けさを取り戻した
その場所で、ナルトとサスケはお互い不貞腐れたように背中を向けていた。
この状況、ナルトはサスケの詰めが甘いと思っているし、サスケは
ナルトが余計な事をしたと思っている。
最初はお互いがお互いを詰りあって、ぎゃあぎゃあと喚いていたのを
ガイが一発ずつ頭に拳骨を落とすことで止めた。
だが、2人はそんな事で腹の虫が収まったわけではないのだ。
「……サクラちゃん、怒ってんだろうなぁ……」
「知るか」
「なあなあ、サクラちゃんは大丈夫かな」
「だから俺が知るかよ。
 まぁ……俺らの事で捕まったりはしないだろう。たぶん」
「たぶんって何だよ!!
 ちょ…サクラちゃんにもしもの事があったら…!!
 サクラちゃーーーん!!」
「うるせぇウスラトンカチ!!
 そもそもてめぇのせいなんだよ、バカ!!」
彼らの言うサクラとは、同じ音隠れでチームを組んでいる仲間だ。
今回の件に繋がった偵察隊にサクラは入っていなかったから、
恐らくまだ里にいる筈なのだが、果たして彼女が自分達のこの事態を
知っているのかどうか。
そもそも、こうやって木ノ葉に捕われている自分達の事を、一体
里ではどのように処理されているのかが気になるところだ。
夜襲の時に殺されたことになっているのか、もしくは逃亡して
行方不明となっているのか。
この場所に居ては、自分達の置かれている状況が分からない。
「……お前は、どう思ってるんだ、ナルト」
「なにが?」
「あの、音隠れのやり方のことだ」
「…………。」
「俺は、サクラの事もあるが……とにかく一度、里に戻りたい。
 戻って……兄貴に確かめたいんだ」
「裏切られたって信じたくねーんだな、サスケ」
ナルトの窺うような言葉に、今度はサスケが押し黙る。
サスケの兄のイタチは、里の上層部『暁』に属する者だ。
だからこそ余計に、この卑劣な行為が本当に味方によるものなのか
信じられないのだろう。
「……俺は、正直なところ音隠れにも暁にも興味ねーんだってばよ。
 ただ、本当にアレが仲間のやり方だってんなら……俺は戻ろうとは
 思わねぇ。
 でも、サクラちゃんが心配だし……一度様子は見に行きてぇ」
「フン、なら話は早いな」
言うとサスケは己の額あての裏側から、もう一本針金を取り出した。
さっき助けに来た時に使ったものは没収されてしまったというのに、
全くもって用意周到としか言えない。
彼はさっさと南京錠を外してしまうと、ナルトを手招きした。
「さっきの今じゃ、流石に逃げるとは思わねぇだろ?
 今の内にズラかるぞ」
「お…おうッ!!」
感心して眺めていたナルトが、サスケの言葉に我に返って大慌てで
後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガイ先生!大変です!!」
「どうしたリーよ、血相変えて」
「ナルトくん達が……ナルトくん達がいません!!」
「……やっぱり逃げちゃったのか」
大慌てで部屋に飛び込んできたリーの言葉に、意外にもカカシは
あっさりとそう呟いて肩を竦めた。
話を聞いたガイもうむ、とひとつ頷いただけに留めたということは、
彼も大方の予測はしていたのだろうと思う。
「どうする?」
「放っとけばイイんじゃない?
 別にこっちの情報をあげたわけでもないんだしさ」
「ふむ……そりゃそうだが……。
 しかし逃げて何処に向かったのやら。
 音隠れに戻ったと見た方が良いのか?」
「それはないんじゃないの?
 だって、その音隠れから逃げてきたんじゃないか」
「……あの、ガイ先生、カカシ先生、」
2人の会話を聞きながら、リーははいと大きく挙手をする。
話を促せば、少し思い出すようにしながら彼は口を開いた。
「前にナルトくんと修行をしていた時に聞いた話なんですが…、
 どうも、彼らにはまだ仲間が残っているらしいですよ?
 その人の事は、ナルトくんもずっと気にしていた感じでしたし、
 もしかしたら様子を見に戻るぐらいの事はするかもしれません」
「ふむ…仲間なぁ」
「野営を組んでいた偵察隊に入っていたわけじゃなかったので、
 自分達が逃げ出した事自体を知っているかどうか…って
 ナルトくんは言っていました」
小首を傾げながらリーがそう伝えると、カカシとガイは揃って
腕を組んで唸りを上げる。
悩み方がとても似ていると、それを眺めながら何となくリーは
そんな事を思った。
「戻ったと仮定すると、どうなる?カカシ」
「まず間違いなく捕まるだろうね。
 俺達ならどうするか考えてみれば良い。
 そもそも、木ノ葉の襲撃で壊滅したのだというシナリオを
 作りたかったわけなのに、事情を知っている奴らがしかも2人、
 雁首揃えて戻ってきたわけだ」
「……どこでどう真実を吹聴されるか分からんな」
「そういうこと。
 だったらまだ、実は木ノ葉のスパイだったとか、裏切ったのは
 コイツらだとか難癖つけて捕まえて、いっそ公開処刑的なことに
 しちゃった方が、より仲間内の士気は高まる」
「ええッ!?」
驚いた声を上げたのは、2人の会話を聞いていたリーだ。
それにきょとんとした目を向けながら、カカシは不思議そうに尋ねた。
「どうしたのリーくん、そんな驚く話だった?」
「えええ、えっと。
 という事は、ナルトくん達は殺されるかもしれないって事ですか!?」
「……ま、そういう事になるんじゃないかな」
「そんなぁ!!なんとかならないんですか、ガイ先生!!」
「まぁ、リーよ少し落ち着け。
 お前はどうしてそんなに彼らを助けたがるんだ?」
「どうしてって……」
ガイの言葉にしょぼんとした表情で視線を下へ向けると、ぽつりぽつりと
リーはナルトを擁護するかのように話し出した。
「……ナルトくんは、絶対に悪い人じゃありません。
 この僕と、あんなに熱い修行を一緒に毎日続けてくれました。
 音隠れの方に未練があるようでは無かったですし……むしろ、
 残してきた仲間の事を心から心配するような人です!!
 ただ黙って殺されていくのを見過ごしてはおけません!!」
「でもねぇ、リーくん」
「お前の熱い気持ちは分かったぞ、リーよ!!」
「ええッ!?」
今度の驚きの声はカカシの口から発せられたものだ。
さぞかしリーの言葉に感動したのだろう、彼は滂沱の涙を流しながら
強く少年の両肩を掴む。
「あの子達を殺させたりはせん、助けてやる!!」
「ガイ先生!!」
「………あー」
感極まったのか同じく涙を流すリーとがっちり抱き合うガイの姿を
眺めながら、カカシは途方に暮れたようにため息を零した。
言っちゃった。言っちゃったよコイツ、と。
「カカシ、一緒に来るだろう?」
「……嫌だって言っても引き摺っていくクセに」
「ははは、まぁその通りなんだが」
「ちょっとは否定して欲しいモンだね」
仕方ない、と立ち上がってカカシは椅子に引っ掛けてあった
ジャケットを羽織る。
行くんだろ?と顎でドアを示せば、応、と妙に意気込んだ返事と共に
ガイが親指を立てて笑う。
びっくりしたままの顔で見上げてくるリーの頭をくしゃりと撫でると、
カカシはにこりと笑いかけた。

 

「此処の留守番、頼んだからね」

 

「……オ、オッス!!」
瞬時に笑顔を全開に浮かべて、リーは元気よく返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

<続>

 

 

 

 

 

 

なんとか逃げ出すところまではいったぞ…。

さて、ここからだ問題だ。(笑)

 

 

 

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