この混乱した状況の中で、得られた情報や自分が知っている事は本当に少ない。
だが、その中でも唯一ハッキリしている事がある。
自分達は裏切られたのだ、ということ。
<The long long story which begins from here.>
「……お、目が覚めたか?」
「あれ……、」
意識がゆっくりと浮上する中で聞こえてきた声に、少年はまだ重い瞼を
頑張ってこじ開けようと試みる。
最初に視界に入ってきたのは青空。
それから。
「………激眉?」
「まだ寝ぼけているのか」
「いででででッ!!
いてーってばよ!!」
あまりに印象的だったので思わず口をついて出てきてしまっただけだ。
なのに思いきり頬を抓られてしまって、少年は慌ててぶんぶんと
両手を振った。
漸く手を放されて痛む頬を摩りながら、少年はきょろきょろと辺りを見回す。
先日の雨の影響で増水した川の水が、普段より勢いを増して流れていく。
どうやら此処は河原のようだった。
見慣れない場所、見慣れない人、それに。
「まったく、驚いたぞ。
ここで修行をしていたら、上流から人が流れてくるんだからな」
「……助けてくれたんだ?」
「そりゃあ、そこで見殺しにするわけにもいかんだろう」
「そっか……ありがとう」
素直に礼を述べた少年に相手は満足そうな笑みで返すと、とにかく無事で
良かったじゃないかと、少年の頭をぐりぐりと撫でた。
「ところで君、名前は?」
「俺?俺は……」
「ガイ!」
答えようとした時、ふいに背後から声とともに気配が現れて、少年は
驚きを隠さないまま勢いよく振り返る。
「び、ビビったってばよ…」
「なんだカカシか、子供を驚かせるような登場は止せと
いつも言ってるだろう。
そういや……もう一人はどうした?」
「それが、こないだの雨のせいか思った以上に流れの勢いが強くてな、
途中まで追ったんだけど、見失った」
「そうか……」
「どこかで引っかかってくれれば良いんだが」
「仕方ないか……そうだ、そういえば話の途中だったな。
名前を聞こうとしていたんだったか」
突如現れた片目を額あてで隠した男と一頻りの会話をすると、改めて
少年を助けた男の方が向き直った。
「俺はガイ、こっちはカカシだ。君は?」
「うずまきナルトだってばよ」
「何処の者だ?」
「…………。」
口を噤んで黙ってしまったナルトに、言えないか、と重ねて問えば、
しぶしぶ、といった口ぶりで少年は口を開く。
「………音隠れ」
「音…?
お前、音忍か!?」
「なんで其処の人間が、川から流れてくる羽目になったんだ」
「偵察の任務で、俺と仲間の忍が国境辺りで野営してたんだ。
そしたら………木ノ葉の連中が夜中に襲撃をかけてきて……」
「なんだって?」
「夜襲…?
そんな情報は聞いてないぞ」
「けど、それは!!」
顔を見合せて不審がるカカシとガイの二人に、ナルトは顔を上げて詰め寄った。
「それは嘘だったんだってばよ!!
俺とサスケは偶然にそれを知っちまって……」
「逃げだした、か」
「俺らが知っちまったって事が向こうにバレたんだ。
それでこっちの命が危なくなって…」
「なるほど、ね」
ナルトの話は断片的なものであったものの、その話から想像を織り交ぜて
考えると、答えは自ずと見えてくる。
「いやぁ、音の連中も無茶するなぁ」
「呑気に言っている場合か!!
これが広まれば、音隠れの中で打倒木ノ葉の意識は更に高まるぞ!!」
「分かってるけどさぁ…。
ま、確かにのんびり構えている場合じゃないな。
下手すりゃその言いがかりを理由にして、こっちが攻め込まれかねない」
「場合によっては、『暁』だって動くかもしれん」
「そりゃ厄介だ……まぁ、此処で立ち話をしているのもなんだし、
一旦戻ろう。
ああ、あと……ナルト、だっけ?」
「へ?」
黒髪の男とずっと話していた片目の男が、ふいにナルトの方へと目を向けた。
思わず身を固くするナルトにへらりとした笑みを見せて。
「此処は木ノ葉の領地で、残念ながら俺達はそこの忍だ。
お前が本当に音隠れの者なのだとしたら、とりあえず今のところ
お前は俺達の『敵』ってコトになる。
あまり良い扱いはしてやれないけど、ま、恨むなよ」
笑顔とは全くそぐわない発言に、ナルトの口元がやや引き攣ったのだった。
『暁』という軍団が木ノ葉隠れの里を壊滅状態に追い込んだのは数年前の話だ。
木ノ葉を潰した暁は、そこに音隠れの里を築き、着々と力をつけつつある。
忍者の里の中では最大規模といっても良い程の里は潰され、数少ない生き残りは
各地へバラバラに散った。
それぞれが少しずつ力を蓄え、いつか必ず『暁』を潰そうと機を窺っている。
いつか暁を打ち倒し、再び木ノ葉隠れの里を取り戻すのだ。
カカシとガイが率いているのもそんな集団のひとつだった。
「ガイ先生、おかえりなさい!!」
「遅い。此処の隊長達がいつまで留守にしているつもりだ」
「まあまあネジ、良いじゃないですか!」
カカシとガイがナルトを連れて戻ってくると、それを見つけた2人の少年が
出迎えてくる。
一人はガイと同じような格好をした、丸い目が印象的な少年。
もう一人は黒く長い髪をした、少し冷たい雰囲気を持つ少年だ。
「………誰?」
「ああ、リーと…そっちがネジ。
2人とも俺の自慢の教え子だ!!」
「へぇ…」
「なんだ、コイツは」
じろじろと視線を向けてくるナルトにあからさまな不快の色を示して
ネジが眉を潜めた。
「今度は何を拾って来たんだ」
「そんな、いつも何かしら拾ってくるような言い方をするな!」
「拾ってくるじゃないか、リーだってそうだろう」
「ガイはこういうの見てると放っておけないんだよ。
ネジくんもそろそろ諦めた方が良いって」
「………。」
カカシにそう言われて肩まで叩かれると、ネジにはそれ以上何も言えず
黙り込むしかないわけだが、ガイのこういう癖は昔からのようで、
カカシなどはもう慣れたものだ。
「それに今回は、ただ拾って来ただけってわけでもないからさ。
コイツはナルトっていってね、音隠れの者らしい。
まぁ……捕虜ってコトで」
「ほ、ほりょォォォ!?」
「……何だと思ってたの、お前」
思わず大声を出してしまったナルトに呆れたような視線を向けて
カカシが呟く。
成り行き上で助けてしまったとはいえ、それが敵軍の人間であると
知ってしまえば、逃がすわけにはいかないだろう。
「そうだと分かってれば、何としてでももう一人も確保しておく
べきだったと思うよ。
どう考えてもお前あんまり情報持ってなさそうだし」
「だ、だったらさァ…」
「だーめ。
それとこれとは話が別だから。
あ、リーくん、コイツを牢にでも放り込んどいてね」
「あ、は、はいッ!!」
カカシに言われて弾かれたように返事をすると、リーはナルトの腕を掴んで
じゃあ行きましょうか、とやんわりとした笑みを浮かべた。
その物腰はどちらかといえば友好的にも取れるのだけれど。
「行き先は牢って、あんまりだってばよー!!」
ナルトの嘆きは誰の耳にも聞き入れられなかった。
<続>
できるかな?という好奇心のもと、始めてしまいました。
ナルトとサスケの関係を考えればできないこともないかなぁと。
ですが、気持ち的にはナルトが主役ではなくて、その複雑な関係を
見守っていく大人の視点で書きたいかなぁと思います。
カカシとかガイとか。そっちを優先的に動かしたいなぁと。
ひとつの大きなストーリーではなく、要所要所だけ掻い摘んで
書ければいいなぁと。
はてさて、どうなることやら。